飲食店営業許可

飲食店を開業するには、市区役所の保健課や保健所からの「飲食店営業許可」が必要です。キャバクラ・スナック営業では風営許可や深夜酒類営業と一緒に必要となる許認可です。
この許可を取るには、厨房やトイレなど設備面での基準や、書類の提出が求められます。
「2層シンクって何?」「蛇口のレバーが条件に関係あるの?」
この記事では、飲食店営業許可に必要な設備要件や書類、申請手続きを、現場経験のある行政書士がわかりやすく解説します!
飲食店営業許可とは?
飲食店営業許可は、食品衛生法に基づく「営業許可業種」の一つで、飲食物を提供する店舗はこれを取得する必要があります。
対象となるのは:
一般的な飲食店(定食屋、居酒屋、ラーメン店など)
カフェ・喫茶店(※調理を伴う場合)
キャバクラやホストクラブなど、飲食を伴う接客業(別途、風営法の許可も必要な場合あり)
設備基準(チェックポイント)
@ 2層式のシンク(流し台)
洗浄用と消毒用で2つの槽が必要
各シンクに給湯・給水が可能な蛇口を設置
飲食提供が簡易な場合(バーやスナックなど)は例外で1槽でOKなケースも
A 蛇口は「レバー式」が望ましい
手で触れずに開閉できるタイプ(レバー式、足踏み式、センサー式など)が望ましい
B 床材と排水
耐水性・洗浄性のある床材を使用(コンクリート、塩ビタイルなど)
傾斜があり、排水口に水が流れる構造
C ゴミ箱の設置
蓋付きのゴミ箱が必要(食品ごみが露出しないよう配慮)
D 冷蔵庫と食材保管
食材の区分保管(生・加熱済み・冷凍など)を意識
温度管理できる冷蔵設備
E トイレの設置
従業員・客用に適切なトイレを設置
洗面台(手洗い場)とせっけん・乾燥設備も必要
F 食器棚・清掃用具の分離保管
調理器具と清掃用具は分離保管
食器保管場所は埃が入らない構造
必要書類(法人と個人で若干異なります)
| 書類名 | 内容 |
|---|---|
| 営業許可申請書 | 所轄の保健所に提出 |
| 施設の図面 | 厨房、客席、手洗い場、排水などを記載 |
| 登記事項証明書(法人) | 法人の場合は必須(3か月以内) |
| 身分証明書(個人) | 免許証などの写し |
| 食品衛生責任者の資格証明書 | 調理師、栄養士、講習修了証など |
手続きの流れ
- 保健所に事前相談(図面持参)
- 申請書類の提出
- 施設検査(保健所職員による立入確認)
- 許可証の交付(通常1〜2週間程度)
- 営業開始へ!
食品衛生責任者とは?
飲食店営業許可を取る際、原則として 食品衛生責任者 を店舗ごとに設置する必要があります。
これは単なる立場名ではなく、食品の安全管理・従業員衛生教育・衛生管理指導などを行う役割です。
食品衛生責任者になるには?
食品衛生責任者になる方法は 3通り あります:
@ 調理師・栄養士などの資格を持っている
調理師、栄養士、製菓衛生師など、すでに食品衛生関連の国家資格を持っていれば、そのまま食品衛生責任者になれます。
神奈川県公式サイト
A 都道府県が認定する講習会を受講して修了する
資格を持っていない場合は、食品衛生責任者養成講習会(講習会)を受講して修了することで資格取得となります。
神奈川県公式サイト
※この「養成講習会」は、資格そのものを取得するための正規の講習です(実務講習会ではありません)。
講習会の特徴と受講方法
各都道府県・指定都市の 食品衛生協会 が主催しています。
講習の形式は 会場での集合講習 と eラーニング方式 の2つがあり、どちらでも受講可能です。
eラーニングの場合は標準学習時間が約6時間程度で、 自宅や通勤中に受講可能 なケースもあります。
受講後に修了証が発行されれば、食品衛生責任者として任命できます。
神奈川県(横浜・川崎を含む)の講習申込み
神奈川県内で食品衛生責任者養成講習会を受けるなら、主に次の協会サイトから申し込みができます:
神奈川県食品衛生協会(代表講習)
神奈川県食品衛生協会が主催する 集合型講習会の申込ページがあります。
オンライン申込フォームから受講申込みが可能で、受講料は約12,100円前後です。
申込時には、氏名・フリガナ・生年月日・住所・電話番号などを入力します。
開催日・場所は協会サイトに掲載されています(例:小田原市など各地域開催あり)。
申込みは インターネットで24時間可能 な講習会もあります。
横浜市・川崎市版 eラーニング
横浜市・川崎市では、eラーニング形式の養成講習会も提供されています。
パソコン・タブレット・スマホで受講できるため、時間の融通が利きます。
※ただし、居住地や勤務先によって受講可能条件があるため、協会サイトで確認が必要です。
実務講習会との違いに注意
食品衛生責任者養成講習会 → 資格取得のための講習(こちらが必要)
食品衛生責任者実務講習会 → すでに責任者の資格を持っている人向けで、資格取得ではありません。
混同しないように注意しましょう。
食品衛生責任者の要点まとめ
食品衛生責任者になるには 資格(調理師等)保有または講習修了が必要。
神奈川県では 協会主催の講習会やeラーニング形式で取得可能。
受講料は地域協会によって違いますが、おおむね1万円前後が多いです。
よくある質問(FAQ)
業態や提供内容によっては例外的に1槽シンクが認められる場合があります。保健所と事前相談をしましょう。
はい。接待行為のある店舗であっても、飲食を提供するなら風俗営業許可と共に飲食店営業許可は必要です
HACCPに基づく衛生管理について
2021年6月から、すべての飲食店において「HACCP(ハサップ)の考え方に基づく衛生管理」が義務化されています。
ただし、一般的な飲食店(小規模店舗)では、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」として簡略化された方式で対応が可能です。
実際の対応方法(例)
店内に衛生管理計画(記録表)を掲示・保管
毎日の温度管理、消毒・掃除などを簡単な記録表で記録
様式は厚生労働省のひな形または保健所の様式を活用
※今のところ、衛生管理計画が無いからといって営業停止になることはほとんどありませんが、保健所の指導対象となる可能性があります。
行政書士からの一言アドバイス
飲食店営業許可は、店舗の規模や業態によって求められる設備基準や図面の精度が大きく変わります。
図面の描き方ひとつで不許可になることもあるため、不安な方は行政書士に相談することをおすすめします。


